正しく引用するためには-1.明瞭区別性と主従関係

前回「「引用」と「転載」の違いについて」で記載した、引用に関する最高裁判例の2大基準、明瞭区別性主従関係について説明したいと思います。これらは長年支持されている判例ですが、絶対的な基準ではなく、むしろ著作権法の条文に立ち返って判断すべきだ、とする学説もあります。

また、特に新しいWebサービスなど判断が難しいケースは、今後も新しい判例基準が出てくる可能性がありますので、あくまでも過去の事例として引用の際の参考までにお読みください。

1) 引用する側とされる側が明瞭に区別されていること(明瞭区別性)

パロディー写真事件」(最判S55.3.28)の判決で明示された基準。他人の著作物である写真に自分の写真の一部を合成したモンタージュ写真が、原著作物の引用に当たるかどうかが争われましたが、本件では「引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ」ないため、引用には当たらないと判断されました。

この判例を基準とし、これ以降の事例においても引用と認められるには、例えば文章であれば引用部分をカギ括弧で括る、フォントを変えるなどの明瞭な区別が必要である、とされるようになりました。

ただし、本件写真は、実体としては引用というよりパロディーという一種の芸術を扱ったものであるとも言えます。パロディーについて、例えばフランスの知的財産権法では制限規定のひとつとして認められていますが、日本では著作者の同一性保持権侵害となる可能性が高いです。

しかし、今後もこのようなパロディーが一切認められないかというと全く可能性がないわけではなく、仮に認められた場合はこのように明瞭区別が不可能な取込型の引用が公然と行われる日も来るかもしれません(参考:林・名和『引用する極意 引用される極意』2009, P35,48,55-56)。

2) 引用する側が主、引用される側が従の関係にあること(主従関係)

同じく「パロディー写真事件」の判決で、引用というためには、両著作物の間に主従関係がなければならないこと、そして本件写真においては、「モンタージュ写真の形式上…従たるものとして引用されているということはできない」ため、言い渡されました。

また、画集への絵画の無断転載が問われた「藤田嗣治絵画事件」(東京高判S60.10.17)では、上記判例の主従関係の定義にさらに踏み込んでいます。

すなわち、「主従関係は、両著作物の関係を、引用の目的、両著作物のそれぞれの性質、内容及び分量並びに被引用著作物の採録の方法、態様などの諸点にわたって確定した事実関係に基づき、かつ、当該著作物が想定する読者の一般的観念に照らし、引用著作物が全体の中で主体性を保持し、被引用著作物が引用著作物の内容を補足説明し、あるいはその例証、参考資料を提供するなど引用著作物に対し付従的な性質を有しているにすぎないと認められるかどうかを判断して決すべきもの」としました。

このように主従関係は少々やっかいな要件で、必ずしも主と従の分量のみによって判断されるわけではなく、あくまでも個別具体的な両者の関係性で判断されることになります。

次回は、引用の必然性や、出典の明記、著作者人格権への配慮など、その他の基準について説明したいと思います。

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参考文献

引用する極意 引用される極意
林 紘一郎 名和 小太郎
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Q&A 引用・転載の実務と著作権法
北村 行夫 雪丸 真吾
中央経済社
売り上げランキング: 206889

コメント / トラックバック 1 件

  1. マンガ画像の『引用』について書いてみる - 空気を読まずにマンガを読む より:

    [...]  ■参考:» 正しく引用するためには-1.明瞭区別性と主従関係 | Knotworking.biz~ベン

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